限りなく透明に近いふつう

やさしい鬼です お菓子もあります お茶も沸かしてございます

その女、魔性につき。

私は高校時代、ずっと飲食店でアルバイトをしていました。

そのお店はファミレス以上料亭未満という感じの地元客に人気のある和風レストランで、バイト仲間はみんな高校生や大学生など歳の近い男女が10人ほど居ました。
店長が非常に気前のいいおじさんだったので、よく仕事の後に皆を食事に連れていってくれたり、閉店後にお店の飲み物を飲み放題にして社員やアルバイトのためにホールをたまり場として解放してくれて、私達バイト仲間は仕事の後にお店のホールでお喋りをして過ごし、私の青春時代の思い出の半分以上はそこで得たと言っても過言ではありません。
 
今日はそのバイト先で出会ったある女の子の思い出を書きます。
 
彼女の名は「ひなちゃん」といいました。
ひなちゃんは私より1つ歳上で、顔はビビアンスー裕木奈江を足して2で割ったような感じで、目尻にセクシーなほくろがあり、やや舌っ足らずな喋り方をするそれは可愛い女の子でした。
 
彼女は性格がとても人懐こくて明るく、誰にでも気さくに話しかけ、私より後にバイトに入ったのですが仕事もすぐに覚えてお店にすぐ馴染みました。
 
初めの1カ月目くらいまで私は彼女のことを「なんて理想的な女の子なんだろう」と感心していましたが、ある時その印象が一部崩れることがありました。
 
お店のホールにはカウンターがあり、その内側で私達アルバイトは普段飲み物をつくったり待機しているのですが、カウンターと内側の境は水槽になっていてそこには常に食用のミル貝がいました。
ミル貝をご存知の方は一度は思ったことがあるかと思うのですが、ミル貝のビジュアルはわりと男性器を連想させます。

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※ミル貝

 
しかし普通の女子はそう思ってもあまり口にしないものです。
ところがひなちゃんはある日のバイト中、急に皆の前で「ねぇねぇ、この貝って超エッチだよね、アレにそっくり〜ウフフッ」と言ってきて、その場にいた私達の度肝を抜きました。
 
そう、彼女は見た目は「ザ・美少女」でしたが、実は下ネタ大好き女子だったのです。
 
彼女のような可愛い女の子が下ネタ好きとくれば、当然ながら皆の親近感はさらに増します。
そして彼女は職場の男性の中ではアイドルのような存在になっていきました。
 
彼女の事でもう一つ印象的だった思い出があります。
ある時、更衣室で私は彼女と着替えが一緒だったのですが、彼女が服を脱いだ姿に私は小さな衝撃を受けました。
普通はその年頃の女子が服を脱いだらキャミソール(下にブラジャー)とパンツという姿が一般的というか、自分を含めそれまで見たどの子もそんな感じだったのですが、彼女は全く違ったのです。
ひなちゃんは一見ワンピース型の水着のようなベージュピンク色の下着を全身に着けていました。

それはパンツとブラジャーと胴体部分が全て繋がっていて、良く見ると胴体部分には縦にワイヤーが何本もがっつり入っており、背中には背骨にそってズラーッと幾つものホックで留める頑丈な作りに見えました。
全体的にレースの装飾があるものの、レースという乙女チックさをもっても尚隠しきれないゴツい「鎧感」を醸し出していました。
私は見慣れぬそれに思わず目が点になり、つい
「それ…何?」と聞いてしまいました。
すると彼女は涼しい顔で「ああ、これ?補正下着だよ。」と言いながら、手慣れた様子でわき肉をブラジャーにぎゅうっと詰めこみました。

私は補正下着というものの存在は知っていましたが、それは「おばさんのするもの」という認識だったので、こんな若いうちにそれを日常的に着用している女の子がいることに驚きました。
しかし人様の下着事情を深く詮索するのもアレだし、あんまり驚きを全面に出すのも失礼かなぁと思い、話を止め自分の着替えをのそのそとはじめました。
すると今度は彼女が自分から
「これね、着るのに1時間かかるんだ〜」と言うのでまた私は驚きました。
私は「何がどうなったら着るのに1時間かかる下着があるんだよ!?」と思いましたが、それを口にする前に彼女が
「も〜エッチする時、いつも大変なの〜。だから彼氏がエッチしたがったら、終わったら着るの手伝わせる条件でしてるんだ〜ウフフッ」と言ったので「あかん情報処理が追いつかない」と判断し「そうなんだ〜」と私は話を切り上げました。
 
さて、そんなひなちゃんですが、下ネタ好きということも手伝ってか、恋愛事にも関心の強い子でした。
 
年頃の男女をいっしょくたにしてるとどこでもあり得ることですが、うちの店でも時々バイト内恋愛が発生しました。
 
そんな中、ひなちゃんはある事件を起こしました。
ある時1人の大学生男子が洗い場にアルバイトで入りました。
彼の名は工藤君としておきます。
 
その時ひなちゃんは確か同じ大学に彼氏がいたはずなのですが、工藤君がバイトに入ると彼女は工藤君に非常に興味を示しました。
 
工藤君がどんな男子かと、皆様に分かりやすく説明するために一言で言うと、失礼ながら工藤君は「ダサメン」でした。
ずんぐりむっくりした体型と赤ら顔で、動作も常にワタワタと慌てている印象がありました。
バイトの女子が話しかけてもテンパってしまいろくに会話が続かないのですが、男子同士だとポツリポツリ話をするような、まぁどこにでもいる地味めな男子でした。
あ、今思えば「桐島部活辞めるってよ」の神木くんの友達に似てたと思います。
 
皆はひなちゃんがこの工藤君に興味を示したことを不思議に思いました。
 
なぜならひなちゃんは普段から女子の前ではバイトの男子のことを
「⚫︎⚫︎くんはぁ、顔はまぁまぁだけどヒナに優しくないから70点、⚫︎⚫︎さんは、服がダサいからそこを直せばヒナもありかなって思う〜」と男子の格付けを行ったり、お客さんでカップルが来て彼氏がイケメンだったりすると
「きゃ〜ん、5番テーブルの男の人超タイプ〜。でも彼女がブス〜、釣り合ってなーい」と言ったり、とにかく男子を見る目が基本上から目線で、なおかつ男女のビジュアルが「釣り合う・釣り合わない」に重きを置いているフシが見受けられたので、はっきり言ってひなちゃんにとって工藤君は誰がどう見ても釣り合っておらず、彼女自身もそう判断してると思っていたからです。
 
しかしひなちゃんはそんな工藤君に対し、誰にでも分かるようなちょっかいを出し始めたのです。
 
どんなちょっかいかというと、例えば、私達ウエイトレスは洗い場に皿を下げる時に毎回「お願いしまーす」と声を掛ける慣わしだったのですが、ひなちゃんはその時に「お願いしまーす、工藤君が洗って下さ〜い」と2人体制の洗い場であえて工藤くんを指名するという、軽めのジャブのようなちょっかいをくり出し、彼の反応を楽しんでいる様子でした。
 
そしてそれは徐々にエスカレートし、工藤君本人に「工藤くんて可愛いよね〜」と言ったり、皿を洗い場に出す時に彼の指をつんつんして、またその反応を見ては楽しんでいる様子でした。
 
工藤君は初めはただ戸惑っている様子でしたが、恐らく彼の人生で異性にそんなに親しげにされるのは初めての経験だったのでしょう。
ましてひなちゃんのような人なつこい美少女にそんなモーションをかけられたら大抵の男子はひとたまりもありません。
彼の心が日に日にひなちゃんへ傾いていくのは、一目瞭然でした。
 
私はそんな様子を見つつある夜、更衣室でなんとなくひなちゃんに言いました。
「ひなちゃん、工藤君のこと好きなの?その気ないならあんまりああいう事言わない方がいいんじゃない?彼も本気になるし。」

ところが、ひなちゃんは
「だってぇ〜工藤君て反応が可愛いじゃ〜ん。大丈夫だよ〜、みんなが冗談だと思ってるくらいなんだから本人だってそう思ってるに決まってるよ〜」と、あまり深刻に扱ってくれず、私もそれ以上返す言葉が思い浮かばかったので「そ、そう…」と引き下がってしまいました。
 
そしてその翌週のある夜、バイト後に私ともう一人のバイト仲間であり小学校からの親友であるケイ子が帰ろうとするとお店の外の柱の影でなにやら話合う男女の姿を目撃しました。
 
「工藤君が⚪︎⚪︎ったらぁ、付き合ってもいいかなって思ってる〜」
「マジで?本当に?」
「うん〜ホント〜」
「よっしゃ〜絶対だかんね、待っててね!よっしゃ〜!」
 
思わず身を隠した私達でしたが、会話はしっかり耳にしてしまいました。
 
男女はひなちゃんと工藤君でした。
⚪︎⚪︎の部分は聞き取れなかったのですが、どうやら工藤君が何かを成し遂げたらひなちゃんは彼と付き合うというような約束をしていた模様です。
 
私もケイ子も、その直後は「なんだったんだろうね?」と話しましたが、ちょうど私達高校生はテスト期間に入り、そのことも忘れ、一週間ほどバイトに行かないまま時が過ぎました。
 
そして私が次にバイトに行った日のこと。
その日はひなちゃんもバイトに出ていました。
工藤君は休みだったのですが、私はひなちゃんの表情がとても暗いことに気が付きました。
 
しかしバイト中は特に彼女と会話はしませんでした。
そしてバイト後に更衣室で着替えている時、ひなちゃんが暗い表情のまま私に言いました。
「ねぇ、今日私と帰ることにして…」
私はひなちゃんの言ってる意味がわかりませんでした。
ひなちゃんはいつもバイトには親の迎えが来ていましたし、帰る方向も真逆なので、私は一緒に帰ると言われてもどうしたらいいかわからず「なんで?」と聞きました。
すると、ひなちゃんは下を向いたまま少し考えると、
「うん…ちょっと、うん、やっぱいいや!なんでもない!今日はまっすぐ帰るね」
と言って先に更衣室を出て帰りました。
 
そしてその数日後、バイトに行くと今度は工藤君は居ましたがひなちゃんは休みの日でした。
その日の工藤君は全身から今までと違う幸福オーラを出し、Dr.村松のジャンピングシューズでも履いてるのか?という程に足取りも軽くぴょんぴょんと移動し、何か指示に答える返事も厨房から店内に響きわたるほどの大声でした。
社員の男性が「おっ!工藤今日元気いいな〜」と言うと工藤君は初めて見せる満面の笑みで「はいっ!」と答え、まさに意気揚々としていました。
 
しかしその翌日、事件は起きました。
 
私がバイトに行くと、ひなちゃんも工藤君も居ました。
しかし、今日の2人はただならぬ雰囲気を発していて、2人ともかなり暗い表情で仕事をしています。
 
ひなちゃんは意識的にか、洗い場に1度も行かずに他の仕事をこなし、工藤君は昨日とは打って変わって重苦しい空気に包まれ、厨房の柱の隙間から捨てられた仔犬のような瞳で、仕事中のひなちゃんを目で追いかけていました。
 
これは…何か、ある…。
私はそう察しました。
 
そして閉店後、普段バイトの子はタイムカードを押してから2階の更衣室へ行き、着替えが済んだ順に店内ホールに戻ってきてそこで飲み物を飲みつつ歓談するのですが、ふと気がつくとひなちゃんの姿がありません。
私がそう思った時、社員の男性がシフト表を持ち「工藤まだ降りて来てない?」とホールに出てきました。
すぐに洗い場のもう1人のバイト男子が「ひなちゃんと工藤がまだです。」と言うと、その場に一瞬妙な静けさが走りました。
 
すると、次の瞬間、
階段の上のほうから大きな声がしました。
 
「だって!!好きじゃなくなっちゃったんだもん!!」
 
!!??
 
それはひなちゃんの声でした。
そして、直後に「わぁーん!」と泣きながらダダダダッと階段を駆け下り、そのままドアを開けて弾丸のように店外に飛び出して走り去るひなちゃんの姿を私達は目撃しました。
 
ホールにいた私達は、全員一瞬あっけにとられましたが、すぐに社員の男性が
「ちょ、見てくるわ」と言って2階に上がりました。
 
ドキドキしながら皆で「何、何?」と待っていると、数分後、ただでさえ赤ら顔なのをさらに真っ赤にして泣きじゃくる工藤君が社員の男性と共にホールに現れました。
 
く、工藤君…めっさ泣いてる…!
 
私達バイト仲間は、誰も何も言えず、ただ黙って工藤君を見つめていましたが、社員の男性は流石に大人なので、すみやかに工藤君を椅子に座らせ、彼にカルピスを飲ませました。
そして工藤君に声を掛けました。
 
「工藤どした?ひなちゃんと何があった?」
 
え…?それ今聞く?
 
私は「そういうのは、上でひと通りやってから来るもんじゃ…」と思いましたが、その場のあまりの緊張感に誰も何も言えない&帰ることもできない状態で、ただ皆もジュースを飲みつつ2人を静かに見守りました。
 
すると、やっと嗚咽が収まった工藤君がポツリポツリと話しはじめました。
 
彼の話を要約すると、工藤君はひなちゃんが好きで真剣に交際したいと考えていました。
2人は連絡先の交換はすでにしていて、彼は毎晩ひなちゃんに好きだの可愛いだのとメールを送り続けていたそうです。
ひなちゃんはそのつど「ありがとう❤︎うれしぃ❤︎」と返事はくれるものの、距離を詰めてくれないので2週間ほど前、しびれを切らし「どうしたら付き合って貰えるのか」と直接聞くと、ひなちゃんは「工藤君が車を買ったら付き合う」と言ったそうです。
 
私は「ああ!私とケイ子が見たのはその場面だったんだ!」と納得しました。
 
そして、工藤君は本当はもっとお金が貯まってから買おうと思っていた車を、なんと親に借金して本当にすぐ買ってしまったそうです。ひょえー。
それがつい先週のことで、車が納車された日に工藤君はひなちゃんを迎えに来たそうです。
私はまたも「あの日か!」と思い出しました。
ああ、点と点が繋がっていく…。
 
そして工藤君はその夜に車内で告白をしました。
すると、ひなちゃんは告白をOKしてくれたそうです。
なんと!
恐らく本当に彼に車を買わせてしまった罪悪感から、ひなちゃんは断れなかったのでしょう。
 
しかし、夢のような交際期間はわずか3日で幕を閉じ、昨夜遅く、突然ひなちゃんからメールで「やっぱり別れたい」と言われて、何がなんだか分からず電話をかけるもひなちゃんは出てくれず、すがるような気持ちで彼は今日バイトに来たそうです。
 
そして、先ほど2階でやっと2人きりになれたので、ひなちゃんに「どうして別れるの?」と聞いたそうですが、彼女はなかなか答えてくれず、最後に一言あのような叫びを上げて逃げられてしまったというわけでした。
 
なるほど…。
私は思いました。
ひなちゃんは告白された時点でおそらく本気で付き合うつもりは無かったのだと思います。
しかし車まで買わせといて「付き合えない」はさすがにシャレにならないと判断し3日間だけ付き合って別れれば、一時でも付き合ったのだから騙したことにならない、思ったのでしょう。
ひなちゃんなりに苦肉の策だったと思われますが、ひどいことするなぁ、ひなちゃん。
私は工藤君に同情しました。
 
ふと気がつくと工藤君の隣で彼の背中を摩りながら聞いていた社員の男性も「うん…うん…」と少し泣いているようでした。
そういえば彼も最近バツイチなりたてでした
もう一人の洗い場バイトの男子もいつの間にか涙ぐみつつ工藤君の隣の椅子に移動しています。
 
彼らは「大丈夫だ工藤!女なんて星の数ほどいる!」とか「あんな可愛い子が3日だけでも彼女だったんだ、誇りに思えよ!」とか口々に工藤君を慰めていまいます。
 
私は思いました。
い、言えない…言えるわけない…真実を…。
 
そして、じんわりとした慰めタイムが過ぎた後、工藤君は突然ふっきれたのか携帯電話からひなちゃんの連絡先を消すと言い出しました
そして、その場でなぜか私に向かって「これ!消して下さい!」と携帯を託されたので、私は言われるがままクリアボタンを押してひなちゃんの連絡先を消去しました。
 
私が「消したよ」と言うと男3人は「うぉ〜!!」と言ってまた泣きじゃくっていました。
なんだこれ。
 
その後、どうなったかと言うと、工藤君はバイトを辞めました。
そしてひなちゃんは3日後くらいに普通にバイトに来てました。
しかし、あの夜のことを蒸し返す人は誰もおらず、私もひなちゃんと少し距離を置きたかったのでその話はしませんでした。
 
当時の話はここまでなのですが、実はこの話には後日談があります。
 
私はそれから何年もして色々な人と知りあい人間観察をし続け、あることに気付いてきました。
 
それは「生まれながらの美女というものは大抵大人になった時、モテることに執着がない人が多い。」ということです。

どういうことかと言いますと、バイト仲間のケイ子も実は小学生の頃からけっこうな美人なのですが、彼女は昔からモテモテで、そのせいで他の女子に逆恨みされたり、信用していた男子に送り狼されたりしてきて、16歳になる頃には「なんでみんな男にモテたいの?ウザいだけじゃん。」と言っていました。
そう、確かにモテるということは、それなりにマイナス要素もあるのです。
モテた経験がない人はモテに憧れますが、生まれながらの美女はずっとモテ続けてきてるので、それなりに嫌な目にあうことを身をもって体験し、大人になる頃はモテ飽きているわけですね。
ケイ子以外にも美女と知り合うと同じ意見の子が多く居て、私はその度にこの説が正しいなぁと思っていました。
 
しかし、実はひなちゃんだけがこれに当てはまらないのです。
 
ひなちゃんの例の一件を大人になってから改めて考えるとあれはどう考えても「モテるのが楽しくてしょうがない」という心理からだと思うのです。
 
ひなちゃんは、工藤君が入る以前にもよく自分のモテ自慢をしていました。
それがいつも「学校の男子によくボディタッチしてたら、その子に告白されちゃって〜」という感じの、自分からわざと「モテに行ってる行為」をした上でのモテだったのです。
工藤君の事にしたって、ひなちゃんがわざと誘惑しなければ、ああいう事にはならなかったと思うのですが、それをやっていたのはひなちゃんがあたかも自分が可愛いこと、モテることを再確認したい為に、相手の好意を引き出していたとしか思えないのです。
 
ひなちゃんは何故あんなに可愛いのに、大人になってもモテに執着してたのか?
 
私はバイトを辞めてからも美女観察をする度に長い間この疑問を思っていました。
 
そして、その謎はある日、急に解けました。
 
私が飲食店でのアルバイトを辞めた後、歯医者で働いている時に仲良くなった女性が偶然ひなちゃんの中学の同級生だと判明しました。
 しかし彼女は私が「⚪︎⚪︎中ってことは⚪︎⚪︎ひな子ちゃん知ってる?」と聞くとおかしな事を言うではありませんか。
 
「うん、あのすごく太った子でしょ?」
と。
 
私の知ってるひなちゃんは全然太っていなかったので、はじめ同姓同名の人違いかと思いました。
 しかし私達はその時、ちょうど彼女の家に居たのでつべこべ言わず、中学の卒業アルバムを見ることにしました。
 
そして、卒業アルバムに映っていたのは紛れも無く、ひなちゃんでした
それも、私の知るひなちゃんより倍のサイズはあろうかという体型の。
 
ひなちゃん、こんなに太ってたんだ…。
その姿は衝撃的でした。
おそらく体重100キロはあろうかという当時のひなちゃんは、目も鼻も肉に埋もれていて、お世辞にも可愛いとは言えませんでした。
 でも明らかにひなちゃんの面影があり、目尻のほくろの位置も同じでした。
 
そして、私はハッとしました。
 
そうか!ひなちゃんは、モテ飽きて無いんだ!
 
そう、私はてっきりひなちゃんを生まれながらの美女だと思っていましたが、そうではなく、彼女は中学卒業後に痩せて初めてあのビジュアルを手に入れたのです。
 だからきっと大学生時代はまだまだモテる楽しみを覚えたての、モテたくてたまらない頃だったのです。
 
そう思うと、あのゴツい補正下着の件も納得がいきました。彼女なりに体型維持を頑張っていたのでしょう。
うわ〜!
そうか!そうだったんだ〜!!
 
私は数年間の謎が解けて、とてもスッキリしました。
ひなちゃんの消息はその後分かりませんが、工藤君のような被害者をこれ以上出さず、さっさとモテ飽きていることを願うばかりです。
 
 この話は以上なのですが、なぜ「ひな祭り」をテーマにこの話を書いたかと言うと、工藤君の携帯からひなちゃんの連絡先を消す時に私は見てしまったのです。
登録名のところが「おひな様」になっているのを。
 
 私はそれを見た時思わず「おひな様て(笑)」と吹きそうになりましたが、なんとか我慢して「ああ、工藤君はおだいりさまになれなかったんだね…」と思いました。
それを思い出したので、ひな祭りをテーマに書きました。
 
なんだかすっかり長くなってすいません。
 
 今週のお題「ひな祭り」でした。
ではまた。