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期待外れの「ママたちが非常事態!?」

ジェンダー

 

はじめに

 
書くのがすっかり遅くなってしまいましたが、今日は先月末のテレビ番組NHKスペシャル「ママたちが非常事態!?」を観て思ったことを書こうと思います。
 
本当は日々めまぐるしいスピードで新しい話題を取り上げるこのブログ界隈で、半月以上も前のテレビ番組の感想をノコノコと書くのはいくら更新頻度がマイペースな私といえど、今更感ありありで少し気が引けるのですが、これは逆に「半月経っても心のモヤモヤが消えない案件」ということであえて今更だけど書かねばなるまいと思った次第なのでお許しくださいませ。
 
まず件の番組「ママたちが非常事態!?」なのですが、観てない方のためにどんな番組だったのかをザッと説明します。
 
番組構成は、VTRとスタジオトークから成り、これまで「育児にまつわる謎」とされてきた数々の疑問点を最新の科学で解明したというVTRを3部構成で観せつつ、合間にスタジオの面々(恵俊彰眞鍋かをり北陽の虻ちゃん、と中盤から京都大学教育研究科の女性教授の方も)が、育児にまつわる現状やVTRの感想を話すというものでした。1時間番組です。
 
私は放送前に別のNHK番組でやっていた番組宣伝のVTRでこの番組がやることを知りました。
そこでは出演者達が「最新科学でこんなに育児の謎が解明されるなんて、もっと早く知りたかったことばっかりでした。」とか「今、育児に悩むママたちはもちろんのこと、この国に住む男女みなさんの育児に対する理解が深まる番組です!」と言っていたので、育児に関する情報番組は通常もよく放送しているNHK(及びEテレ)ですが、あえて「最新科学で育児を解明」という謳い文句でスペシャル番組を作るからには、さぞかし違った切り口というか、新しい視点の内容になっているのかな、面白そうだな、という期待が湧きました。
それで観てみたのですが蓋を開けてみて愕然としました。
なぜなら「面白かった」どころか、心にモヤモヤとした胸くその悪さしか残らなかったからです。
 
もちろんやたら「最新科学で解明!」と謳っていただけあって、確かに各パートの解説VTRの中には、最新科学ゆえ初耳の情報もあり「勉強になる」と思ったところは多々ありました。
ですが、もし私が明日誰かに「こないだのNスペ観た?私見逃しちゃったんだけど、どうだった?」と聞かれたら私は迷わず「胸くそ悪かった」と答えると思います。
つまり私にとってあの番組には「知識が増えた、長年の謎が解けた」という「面白さ」の上をいく「胸くその悪さ」が感じられたのです。
なんだか最近毎回私はテレビの文句ばっかり書いていて自分でも嫌になるのですが、今回も胸くその悪さの原因を自分なりにまとめないとずっと心のモヤモヤが晴れなさそうなので、今日はここにまとめたいと思います。
 
「期待はずれ」の原因
私は、番組後に柿ピーを食べながら自分なりに「なんでこんなに胸くそが悪くなるんだろうなぁ」と考えたところ、一言で言えば「期待はずれ」だったんです。
そして期待はずれの原因は色々ありますが、大きく分けるとその原因は以下の2つです。
1、ミスキャスト
2、育児について私の考えとのギャップが大きかった
 
ここからはそれぞれの原因別に説明しますので、まず1のミスキャストについて。
 
今のテレビ番組のキャスティングって、それぞれ演者に何らかの「役割」があるように思うのですが出演者の3人のうち、眞鍋かをりと虻ちゃんは最近ママタレントとして活躍しているので、彼女達の今回の番組における役割は「世の中の悩める育児ママ」が「共感できる存在」として置かれていたと思います。
 
案の定、2人は番組冒頭のVTRで一般の主婦の方が育児の大変さを「なんの地獄かと思った…。毎日、予想の下を行く生活です。」と語ったのを受け「わかる!私もそうです!」「こんなに大変なんだって、やってみて初めて思いました。」とそれぞれに共感の声をあげていました。
ここでは私も「うんうんそうだろうなー」と思いましたし、キャスティング目線で言うと2人は見事に「悩めるママ達の共感者」という役割を果たしていて、この2人のキャスティングは良かったと思います。(私は青木さやかも居て欲しかったけど)
 
ですが、問題なのは恵俊彰氏。
彼は眞鍋&虻ちゃんのコメントを聞いているあいだ、眉をちょっとしかめて小首を傾げる「よく分からんなぁ」みたいな顔をしていました。
その時点で私は「あ、感じ悪…」と多少嫌な予感がしたのですが、次の瞬間、彼の開口一番のコメントはこうでした。
「ねぇねぇ教えて?何がそんなに大変なの?」
それに対し虻ちゃんが「もう全部いっぱいいっぱいでとにかく大変なんですよ。」と言うとさらに
恵「生まれてきて可愛いかったり愛しかったりするんでしょ?」
虻「するんですよ、するんですけど、そこを上回る大変さが…」
「ハァー、何でそんなになるんだろうか…?」
 
 
私はこのやりとりを見ていて
「開始3分で早くも分からず屋登場か!」と思いました。
 
ここでちょっと話がそれますが、私は常日頃から世の育児ママ達を普段苦しめているものの1つが世間の「分からず屋」の存在だと思うんですね。
ベビーカーで外出して子供が泣くと「なんで母親のくせにそんなに泣き止ませられないんだ?」という目線を送る分からず屋。「子供の世話で忙しい」と言うと「家で子供の相手してるだけで外仕事してるわけじゃないのに、何がそんなに忙しいんだ?」と首をかしげる分からず屋。「子供は可愛いけど憎らしいことも多い」と言うと「母親なのに我が子が憎いなんて信じられない」と驚く分からず屋。
まぁ、世の中には色んな人がいるのでこういう人が「悪人だ」とまでは私も思いません。ただ「分からず屋」は多分たまたま育児に関わってこなくて育児者に共感出来なかったり、時に相手の気持ちを図れなかったりして、無意識やごく軽い気持ちで育児中の母親に対してそういう発言になってしまうことがあるというだけだと思います。
しかし、受け手となる育児中の母親というのは日々意思疎通の難しい乳幼児の相手をして「なんでわかんないの?」という感情を連続して痛感し、「自分と子供の気持ちが分かり合えない関係性に常にやきもきしている精神状態」だと思うんです。
だから、そこにきて目の前に「大人なのに話の分からない奴」が現れると多分「やっと言葉が分かる相手と喋ってるのに、ここでも気持ちは分かってもらえないんだ…」という感じの絶望感と強いストレスを感じるんじゃないかと思います。
もちろん人は誰だって身の回りの人を「理解者」と「分からず屋」に分けたら、なるべく「理解者」とだけ接点を持っていたいものだと思いますが、たぶん育児中じゃない人が「分からず屋」と対面した時に感じるストレスより、上記のような理由で、母親達のほうがそのストレスをより強く感じているものなんじゃないかと思うんです。
だから乳幼児を育児中の母親は通常よりもっと「分からず屋を遠ざけたい精神状態」であり、そんな中に現れる「分からず屋の存在」が育児中の母親を苦しめているものの1つになってる気がしています。
 
で、キャスティングの話に戻りますが、こういう番組を作る側は「育児に悩むママ必見!」と言うからには、この番組のメイン視聴者を「育児に悩み、なにかしら救いになる情報を求める母親」を想定しているはずだと思うんです。
つまり、観ている人の多くは「分からず屋から遠ざかりたい母親」であり、その母親達がこの番組を観て得たいものは「共感」や「育児に有益な情報」だと思うんです。
 
なのに、番組開始3分で恵俊彰のこの「分からず屋」具合を見せつけるとは、まさにNHKの鈍感さここに極まれり」という感じがしました。
世間の分からず屋を避けて、育児に救いの手を求めてチャンネルを合わせた母親達が「眞鍋かをりも虻ちゃんも私と同じだー」と彼女達に感情移入して心を開いたところに「あんたらの気持ちは分からん」という恵俊彰の分からず屋パンチを食らわす場面を観せられる。
「育児ママ必見!」どころか、これじゃママさんがっかりでしょ。
 
恵俊彰氏は番組を通して最後までだいたいこのような感じだったのですが、このような様子から彼はキャスティング的には「ママ達の共感者」という役割ではないのは確実にわかります。
では彼に当てられた役割がなんなのかと考えると、おそらく番組制作者としては女性2人は「世の母親達の共感できる存在」という役割、あと1人は「彼女達に質問を投げかける役割(質問するからには共感者でなくても良くて、バランス的には男性を)」という意向があり、
その上で「育児番組だし子沢山の男性タレントがいい」ということで恵俊彰氏を選んだのかなと私は推測します。
 
つまり恵俊彰の「分からず屋役」というのはキャスティングとして、わざとだったんじゃないかと。
 
それに対し私は、たしかに「番組ゲストに分からず屋を置くこと自体」は良いと思います。
「分からず屋」は池上彰番組における鈴木奈々の働きを観てわかるように、情報を伝える番組には1人そういう「わかんないの、おせーて」という役割が居ると、そこからメインの人の話を引き出せるので、番組進行上は必要な役割だからです。
おそらく製作者としては、いつも民放の昼番組で基本的に「僕ちんわかんないのおせーて」的な立ち回りが抜群に上手い恵俊彰を、この番組でもその役割としてキャスティングしていて、確かに一見それは妥当なキャスティングに思えます。
 
しかしですね、一見妥当に見えても、実は全然妥当じゃないと私は思うんですよ。
 
なぜかと言うと恵俊彰鈴木奈々と違ってその3人の中で1番立場が上のタレントですから、鈴木奈々のように「下からバカなフリして引っ掻き回す」のではなく、彼がそれをやると、単に「分からず屋の権力者男性が上から若い母親達に無理解を示す図」にしか観えなかったんです。
だからもう、冒頭3分で私は「あーこの、話の通じないおっさんと対面した時のヤな感じわざわざテレビで見せられて胸くそわるー」と思いました。
 
私としてはこのキャスティングに対して言わせてもらうならば
「どうせ、誰か男性タレントを1人『分からず屋役』にするなら、せめて未婚か子供が居ない人にしてくれ!」と思いました。
 
なぜかと言うと、まだ育児の機会が無い男性タレントが「分かんないのおせーて」な態度なら「まぁ、まだ育児したことないだろうし、仕方ないか」と思えるのですが、恵俊彰氏4人の子持ちです。
 
そんなの、テレビの前の各々の家庭で孤立奮闘してる世の母親達からしたら、4人の我が子の乳幼児期を知ってるはずの父親が「育児についてわかんないの、おせーて」って、どゆこと!?ってなるじゃないですか。
 
しかも、そういう気持ちで番組を観ている中盤で明かされた驚きの真実がこちら。

 
恵俊彰、オムツ替え1回しかしたことないそうです。「自分には向いてないから」という理由で。
この段階で、冒頭の恵俊彰の「なんでそんなになるんだろうか…?」という分からず屋具合には大納得ですけどね。
「そりゃ、わかんないの当然だろうな!!やってないもんな育児!」ですから。
 
虻ちゃんが恵俊彰に言われていた「子供が可愛いんでしょ?なんでそんなに大変なの?」という言葉は、世間の分からず屋が今日もどこかで母親達に何気なく言っている台詞で、それは彼らに言われるまでもなく、母親自身も自問自答し、育児にまつわる悩みの根源的な疑問ですらあると思います。
 
だから母親達はもうこのような「なんで大変なのか分からんなぁ」という無理解な声はうんざりで、なるべくなら聞きたくないはずの言葉だと思うんです。
 
私は、メイン視聴者のその気持ちを汲まずにそういう場面を冒頭で流す番組の作りに出鼻をくじかれた思いですし、世の育児ママ達の悩みの種になりがちな「父親の育児不参加」を堂々と、何故か誇らしげに語る恵俊彰の姿を観て「これはミスキャストだろ…」と思ってしまいました。
あと、恵俊彰の「育児しなかった話」は最終的に女性陣の「恵さんの奥さんすげー」で終わってたのですが、これも結局「父親がオムツ替えすらしなくても4人育てたすごい母親」という存在を意識するエピソードなわけで、番組を観ている悩める母親達にしてみると、中には「1人の子供も満足に世話出来ない私って…」という劣等感を感じる方も出てしまうんじゃないかなぁと思いました。
まぁ、世の中には色々な家庭があるので、恵家では育児は奥さんが専任になることが両者合意ならそれはそれで良いと思いますが、一般家庭で観ている母親達に、あえてここでそういうスーパー主婦の例を聞かされるのは酷なのでは、と思いました。
彼は本人の言うとおり「オムツ替えすら向いてない」のなら、今後「4児の父」という肩書きだけで育児番組にキャスティングされるのは「向いてない」んじゃないかと思いました。
 
そんなわけで、私がこの番組で胸くそ悪かった理由の1つはこのミスキャストにあります。
 
 
では、次に2の「育児について私の考えとのギャップが大きかった」ということの説明をします。
 
番組で取り上げた「育児にまつわる謎」の内容は大きく分けて以下の3部構成になっていました。
 
①現代の日本では出産後に孤独や不安に陥るママが急増していることを受け「なぜ産後うつになるのか?」「日本特有のママ友を作りたがる文化はなぜあるのか」について解明。
 
②多くのママが「私は母親失格?」と思ってしまう原因となる「夜泣き」や「イヤイヤ期」について解明。
 
③ 産後「パパにイライラしてしまうママが続出」その原因を解明。
 
これらはどの解説VTRも分かりやすくて、どれも「知識として知っておいて損はない」という内容でした。
しかし、私は見ていてところどころ「んー?」となってしまう場面がありました。
 
それがどういうところかと言うと、例えば「赤ん坊が何故夜泣きをするのか?」の解説VTR中。
番組を観てない方のために説明すると、赤ん坊が夜泣きをするのは、お腹の中で胎児が昼夜逆転の睡眠サイクルだった名残りなんですね。
それは「母体が睡眠中に胎児が起きるほうが母体の負担にならないからそうなっている」らしくて、番組ではその胎児の睡眠サイクルの仕組みを解明というVTRを流していました。
その終盤はナレーションで「胎児は、実はお母さんを守るために夜起きていたのです。」とまとめられていたのですが、その時にワイプの出演者達が口々に「(赤ん坊が)空気読んでるんだ〜」「気ぃ使ってるんだ〜」と言ってたんです。
私はこの時の出演者達の感想がなんだかモヤっとしました。
というのは、身もフタもない考え方かもしれませんが私の考えでは、胎児にとって母体の健康は自分の為でもあるし「ママの為にボクは夜に起きるね」と思うその脳みそ自体がまだ形成されてないのだから、これは「赤ん坊がママを気遣って夜起きてくれてる」という「ほっこり話」ではなく単に「そういう人体のシステム」ってだけのことだと思うんです。
それを「赤ちゃんがママのためにしていた行動の名残りだから」っていうストーリーにすると、そういうのが好きな人は受け入れやすいのかもしれませんが、私は醒めるほうなんです。
なんというか「番組の宣伝文句が『最新科学で育児の謎を解明』で、理系な話で種明かしをしたわりに、着地点はほっこりメルヘン話にするの?」という感じ。
それはまるで「女はこういう話が好きだからそう仕立てた」という風に見くびられてる感じで「こういう話(ほっこり)」にノレない私は「けっ」となりました。
 
あ、もちろん観てる人が個々にどう思うかは自由だと思いますし、どう思うママさんも「おかしい」とは思いません。
夜泣き対応をしている時にこのVTRを思い出し「ママの為だったんだもんね、仕方ないね〜」と思うと気が楽になるママさんもいるだろうから、そういうママはほっこりと受け止めれば良いんじゃないかと思います。
 
でも私みたいなタイプのママさんのこの部分の感想は「で?『赤ん坊がママのためにしてたことの名残だから』と思えば『夜泣きも耐えられるよね?』って言いたいの? 」と思うんじゃないかなーと思いました。
 
あと、他にも「なんか納得できない」と思った場面は、②の「世の母親達が『私って母親失格?』と思うのは何故か?」について解明していたくだりのところ。
 
そのVTR内では「母性はそもそも女性だからと言って生まれつき備わっているものではなく、育児経験によって育まれる」ということを科学的実験で立証するために「母性が育つか実験」として4人の女子大生が一定期間の擬似育児体験を経て、その前後で彼女たちの脳の「育児に関わる部分の活動」が「活発になったかどうか」を見比べていました。
 
そして全員の脳の働きが実験前より活発になったことを受けナレーションでは「脳内で、いわゆる母性を産む活動が起きたのです。」と説明していました。
ようは「育児経験を経たことで脳が育児向けに変化した」ということはたしかに立証されていたVTRだったのですが、私はそれを観ていていまいち「母性」というものの本質がなんなのか最後まで分かりませんでした。
母性とは「育児向けに変化した脳」のことなのか「脳の変化が引き起こす心理作用」のことなのか、はたまたそれ以外の何かなのか…私がバカなのかもしれませんが、その説明ではどうにも納得できず、私はいまだに「母性」というのが科学的な根拠のない「概念」に近いものなんじゃないかと思っています。
 
そしてその実験自体も、なぜ被験者が「女子大生」に限定されていたのか?という疑問が残りました。
VTRで「母性が女性なら生まれつき持ち合わせているものではない」と明言してくれた事はありがたいと思いましたが、この実験の被験者を女性に限定したことから、この番組の製作者が「男性でも母性は獲得できるor出来ない」というところまでは踏み込むつもりはなく、結局「母性=女性が獲得していくもの」という立証だけして「育児の話だから実験は女性だけでいいでしょ。」と思って作られている感じがしました。
 
私はこの実験がもし男子大学生2人、女子大生2人で行われていたら多少有意義な実験だったんじゃないかと思います。もし実験結果が「男女で差はあるものの男性も母性は獲得できる」なら、男性の育児を促進する材料になるし、逆に「男性に母性は獲得出来ない」と分かれば「なんで女ってだけで1人育児を背負わされるの?」と不満を抱えているママさんも、いくらか割り切る材料になるからです。
 
ただ、私は大前提として、こうした育児の話についてもともと「母性うんぬん」を持ち出すことが、どうも好きくありません。
母性の実態が分からないので「女性=母性持ち=育児担当者」とする流れに納得してないからです。
 
私は育児担当者を「母性のある方にお任せします。」で片付けていた時代は終わりのような気がしますので、もし育児に関して「適正による担当者」を定めるとするならば、その担当者に必要なのは、実体の分からない「母性」という謎の存在ではなく「親たる自覚」のほうが確かなものだと思います。
親たる自覚は、男女の性別は問わず父親も母親も本人が「その気になる」ことで持ち合わせることが出来るし、職業やすべての事柄について「性別による役割分担」から離れようとするこれからの時代には、そっちのほうが合っている気がします。
 
たぶん、番組を観ている現代の悩めるママさんたちが求めているのは「自分達の性別がどれだけ育児向きに作られているかの証明」より「夫も親として共同養育者の自覚を持てる方法」だと思うんですよね。
 
なのでこの番組で、育児に関して「母性」という単語を持ち出して「女性の話題」に限定しようとする事自体が、最新科学というわりには、新しくないものを感じましたし、私の感じる育児についての所感とギャップがあって、今の時代のママたちのニーズにもあってない気がしました。
 
あともう1つ、私の一番納得のいかないところは、③ の産後「パパにイライラしてしまうママが続出」その原因を解明のVTRのくだりです。
 
世の中には、産後急に夫の言動にイライラしてしまう母親が多く、父親も母親自身もそのことに悩む家庭が多いのはよく知られていることですが、番組ではその「イライラ」の原因を科学的に解説していました。
原因を簡単に説明すると、女性は出産や授乳に必要なオキシトシンというホルモンが出るのですが、そのホルモンの作用には「我が子への愛情を高める働きと同時に、我が子の害になることへは攻撃的になる働き」があって、物事の「快」「不快」が、母親の感情を過敏に「愛情」と「攻撃」のに動かしてしまうんだそうです。そのため、たとえパートナーの夫であっても育児に非協力的な部分が見えると「不快=攻撃対象」になってしまう、と番組では解説していました。
 
番組ではその後に「妻のオキシトシンを攻撃ではなく愛情に働かせる為に夫がすべきことは?」というVTRがあったのですが、この最後のVTRは「育児中のママさんに1日心拍計をつけてリラックス状態とストレス状態の波形を測り、結果を見る」というものでした。
 
結果ママさんはほぼ1日中ストレス状態にあることが判明したのですが、その中でわずかにリラックス状態だったのが「授乳中」と「夫と育児について話し合いをしている時」だったんですね。
 
で、ナレーションやスタジオの有識者の方のまとめは「旦那さんが育児で悩める妻に寄り添うことで奥様は愛情を強く感じてリラックスできる。」「パートナーが『ママすごい』と認めてくれる事が大事ですよね。」となっていました。
 
このまとめ、おかしくないですか?
いや、変な事は言ってないというか、もちろん「旦那さんが妻に寄り添う事」も「妻の働きを認める事」もすごく大事だとは思います。
でも「そこ止まり?」というか番組の提唱する「旦那さんの理想形」が『良き傍観者止まり』なんですよね。
 
私もこれが20年くらい前に放送するテレビ番組なら、これでよかったのかと思います。
その頃なら、男性が家事や育児をすることが本当に珍しくて、まだ「男性=外で働く役目」「女性=家で家事育児に専念する役目」の枠に疑問を持つ人が少なかった時代ですから、それより昔は夜泣きする赤ん坊と妻に旦那さんが「うるさい!俺は明日も仕事なんだからサッサと黙らせろ!」と言うこともザラだった時代なので、夜泣きに対して黙っていてくれるだけでも「優しい旦那さんねぇ」「皆見習って欲しいわよねぇ」だったのかなと思います。
つまりテレビで「ご主人は良き傍観者を目指しましょう」を提唱するのは、その時代から既に言われていたことなので、「2016年にまだそこ目標に掲げなきゃな地点なの?」という感じなんですよ。
 
もちろん、世の中には色々な男女がそれぞれの家庭の形を作り上げているので、現代でも「夫が怒鳴らないでくれるだけでありがたい」「育児の相談を聞いてくれるだけでも嬉しい」という奥さんも沢山いると思います。
そういう家庭にとっては「旦那さんが良き傍観者になること」すら「目標」になると思うのですが、この番組は「最新科学」「全く新しい育児の見方」という宣伝文句を謳ってるから、私としては観る前に「育児にまつわる最先端」を提唱してくれるのかな?っていう期待があったんです。
なので「これからの育児の理想形」として、これまで既に掲げられてきた地点より、高いところとして「男女の共同養育」を提唱しても良かったんじゃないの?と思いました。
 
あと、私は番組タイトルの「ママたちが非常事態!?」も謎でした。
というのは、私は普段周りの人やTwitterなどで聞くいろんな母親の声から
「昔からの育児負担が減らないまま、女性が仕事もしろしろと課せられてる最近の社会全体のいびつさ」をこの番組が「非常事態」と言っているんだと勝手に想像していたんですね。
なのでそうだったら面白いなーという期待で観ていたのに、そこにはほぼ触れてなかったので、結局肩すかしでした。
 
このように番組の掲げた「育児家庭の理想形」や②のように「育児=女性の話」と限定して終わっていたことなどが、私の育児に関する考えとギャップがあって、私がこの番組に「期待外れ」と思った原因です。
 
 
最後に
 
最後に、ここまで読んでいて
「そんなに育児に不満ばかり言って女性は育児がそんなに嫌なの?1番深く我が子と関われる素敵な仕事なのに何が不満なの?」と疑問に思う人に、母親達の気持ちを想像できる例えを出します。
 
自分がもし男性だとして、関わる女性みんな「あなたは男だから力仕事はあなたの仕事よね。」という態度だったらどう思うでしょうか。
2人にとって必要な荷物でも、荷物が出るたび「ハイ、これは男仕事ね」と渡してくる女性ムカつきませんか?
 
たぶん「そりゃこっちのほうが筋力あるから荷物運びの適正はあるけど、キミも手があるよね?少しは持てるよね?」と思うんじゃないでしょうか。
 
そういう女性より、自分から荷物を持って「私はこれだけ持つから、あなたは重い方持てる?」と、初めから「分担する気持ち」のある女性のほうが一緒に暮らしたい存在だと思うんです。
 
この男性の「男だからって無条件に荷物担当にするなよ…」という不満が、女性の「女だからって無条件に育児担当にするなよ…」と同じだと思います。
 
荷物運びも、育児も一方的に相手に「あなたの担当」と相手に決めつけられていたら誰しも「適正はこっちのほうがあるかもしれないけど、適正のある方に丸投げしていい事じゃないでしょ」と思うんじゃないでしょうか。
 
男性も初めから「荷物運びを分担する気持ち」がある女性と暮らしたいのと同じで、女性もはじめから「育児を分担する気持ち」がある男性と暮らしたいだけなんです。
多くの母親が1人で育児を背負うことに不満なのは、育児が嫌だとか、子供が可愛くないのではなく「2人で出来ることをはじめから放棄しているパートナーの態度」が嫌なんです。
 
私は、世の中のいろんな人がそこの気持ちを想像できると良いと思いますが、世の中には「我が子が可愛きゃなんでもできるはず」と根性論で押し通す人がいます。
そういう人は「育児を1人で背負わされて大変」と言う母親に「我が子が可愛いくないのか?」とトンチンカンな事を言います。
それは「荷物を1人で持たされて大変だよ」と言う男性に「女に荷物を持たせて恥ずかしくないのか!」と言うくらいトンチンカンな返しだと思います。
そういうトンチンカンが減っていくといいなと思います。
 
もちろん実質的な育児にどれだけ旦那さんが関わるかは、旦那さんの仕事や各家庭の事情で多かったり少なかったりすると思いますが、夫婦で旦那さんが「自分も担当者の1人だよ」という認識がある家庭が増えれば、実質的に育児作業の数が同じでも、妻の不満は減るんじゃないかと思います。
 
散々こき下ろしてきましたが、私はこの番組のことを「すごく為になった」「面白かった」というママさんも沢山いたとは思います。
そして、そういうママさんに「こんな番組で満足するなんてレベルが低い!」なんてことは本当に思いません。
育児に悩む方とって、どんな情報が役立つかは人それぞれなので、こういう科学的見地からの情報で「科学的根拠が分かったから、私明日からもっと頑張れる!」となったママさんが沢山居たなら、良い番組だったのだと思います。
 
ただ、私はこの番組が全てのママさんにとって「あ〜観て良かった〜」となる番組では無かったんじゃないかなぁと思ったので、その気持ちを書きました。
 
私がこの番組全体に感じた印象は
「というわけで、理屈が分かればあんた達も頑張れるよね?」という他人事目線のエールです。
 
再三書いてますが、現代の母親達の育児に対する悩みや不満の要因は「自分の出来なさ」だけではなく「女性だから無条件に育児責任を全任させられる不公平さ」にあると思います。
男女で作った子供を「産んだほうだから」で、女性に一任する慣習。
外での仕事には「女性も輝け」と参加を促すわりに、家での仕事には「男性も輝け」と参加を促さない政府。
その「育児に対する社会全体からの他人事感」が多くの母親達を苦しめているのに、番組からの1番のメッセージがその「他人事満載のエール」だったのが本当に残念です。
 
番組では「人類はそもそも共同養育仕様に出来ている」と明言して「女性はホルモンの関係で不安になるイライラする」と説明していました。
それなら話は「ホルモンの働きに左右されない男性は平常心で育児が出来る存在でしょう」と着地することも出来るはずなのに「育児をするママ(主体)のサポートがパパの役目」という着地点にとどまったこの番組。
 
締めが良くなかったので、私は結局この番組で色々と紹介されたせっかくの科学的根拠も、いうなれば「荷物が重いつらい」と言う男性に対して「男性の筋肉量はこれこれこうで、女性より何パーセント多いから荷物運びに向いています。女性が運んだ時の効率に比べ男性が運んだ時の効率は…」と説得してくる女みたいなウザさを感じました。
 
番組的には「国としては共同養育が実現しやすいように変わっていく必要性」や「これからの時代は男女共に主体的に育児責任者であるべきでしょう、という啓発」あとはせっかく最新科学と謳うなら「夜泣き対応はどこまで手を抜いても成長に問題ないか」の科学的検知みたいな「今夜から実質的に助かる情報」を出したほうが「悩める母親のために」とした番組ならニーズに答えていて、もっとたくさんの母親の心が軽くなるメッセージが発信できていたんじゃないかと思います。
 
 
というわけで、久々に長めの文章になりましたが、読んでくれた方はお疲れ様でした。
 
ではまた。