まずはこの写真をご覧頂きたい。
これは私が中学生の頃に我が家で飼っていた猫の「ちぃちゃん」だ。
この、一見なんの変哲も無い猫が、まさかあんなことになるとは、当時家族の誰も予想していなかった…。
冒頭、アンビリーバボーのナレーション風に書いてみたけど疲れるので普通に戻しますね。
あと、一見なんの変哲もないとか書きましたけど、ちぃちゃんて、この通り高貴で優雅でビューティホーじゃないですか。
なんの変哲もなくないんですよ。
ノルウエージャンフォレストキャットかメインクーンかという見た目なんですけど、それらの長毛大型猫が流行ってきたのってここ数年だから、1994年当時はかなり珍しい見た目だったと思うんです。
このようにスペシャルプリティーだし。
夏毛なので一回り小さいちぃちゃん。いつ見ても可愛い…!
で、この今日はこのちぃちゃんについて書きます。
ちぃちゃんは、我が家では宇宙人だったことになっています。
今でも家族が集まったりした時には家族の間で「三郎は甘ったれだったねー、クロちゃんは犬みたいに投げた玉をくわえてきたよねー」と昔うちで飼ってた猫達の話が出るのですが、
三郎とクロは放っておくと勝手にシンクロやってる。
ちぃちゃんについては「ちぃちゃんは不思議だったね」「ちぃちゃんは宇宙人だったんだよね」と普通に話してます。
ちぃちゃんのどのあたりが不思議だったのかというと、まずちぃちゃんはおそらく人語を理解していました。
そのことがわかるエピソードとして、ちぃちゃんが我が家に来た経緯を書きましょう。
ちぃちゃんはもともと近所の平田さん(仮名)が飼っていた猫でした。
母が平田さん家に行く度に「平田さんち、えらい可愛い猫飼ってんだぜ」と言っていたので、私達はちぃちゃんの存在は知っていたのですがちぃちゃんは外歩きをしない猫らしく、母以外の我が家の人間はちぃちゃんの姿を見たことはありませんでした。
そんなある日、学校から家に帰るとこのスペシャルプリティーなちぃちゃんが我が家に居ました。
我が家には先住猫のカナちゃんというオス猫が居て、カナちゃんはそのあたり一帯のボスネコで、強面で迫力がある猫だったのですが、
眼光鋭いカナちゃん
ちぃちゃんは初日からカナちゃんにビクともせずこのカナちゃんお気に入りの椅に陣取り、くぅくぅと寝て居ました。
私が母に「この子は…?」と聞くと、母は平然と「平田さんがくれたの」と言います。
話を聞くと、平田さん家はお父さんが国外線のパイロットで、先日どこかの外国に行った際に捨て猫を見つけて連れて帰ってきたそうです。
平田さん家には既にちぃちゃんが居たので、平田さんは二匹が仲良くやってくれることを願って新しい猫を迎え入れたそうなのですが、残念ながら二匹の相性は悪かったそうです。
それで平田さんちがそういう状態になって数日後、おしゃべりをしに平田さんちに行ったうちの母はその話を聞いて前々から可愛いと思ってたちぃちゃんのことを「そんならウチにくれない?」と聞きました。
すると平田さん夫婦も「貰ってくれるの?」と喜んでちぃちゃんをくれたそうです。
私は「猫ってそんな簡単に家が変わって平気なんかな?」と思いました。
仔猫ならまだしもちぃちゃんは既に3歳くらいの成猫だったので、うちで飼ったとしても歩いて1.2分の近所の平田さんの家にすぐ帰ってしまうんじゃないかと思ったのです。
それで、母にその心配を言い「大丈夫かな?」と聞くと、母は「どれ、そんなら話してみようか」と言い、2人でちぃちゃんを起こして、母が話しました。
「あんたは今日、平田さん家からウチの子になったんだよ。今日からこの家があんたの家だから平田さん家に帰っちゃダメだよ。散歩には行ってもいいけど、夜はウチに帰ってくるんだよ。」
ちぃちゃんは「さよけ」みたいな顔でコクリと頷きました。
眠そうな時のちぃちゃん
すると、不思議なことにちぃちゃんはその日から本当にすんなりと我が家に居着きました。
散歩はあまり好きじゃないらしく、1日1回朝だけは「出して」とせがむので戸を開けてあげるとピャーっと出て行くのですが、5分もすると帰ってきて後は1日家の中に居るようになりました。
さらに、ちぃちゃんは平田さん家では「ユキ」という名前だったのですが、これがたまたま私の姉と同じ名前だったので、数日生活してみるとわりと紛らわしく、うちで飼うからには別の名前にしなきゃということになりました。
そして母が2秒で「ちぃちゃん」と名付け、また寝ているちぃちゃんを起こして「あんたは今日からユキちゃんじゃなくて、ちぃちゃんになったからね。」と言うと、ちぃちゃんは「さいですか」という顔でコクリと頷きました。
そしてまたも不思議な事に、ちぃちゃんはそれ以来「ユキ」と呼んでも無反応で、「ちぃちゃん」と呼んだ時にだけ反応するようになったのです。
猫って、呼ぶとニャーと鳴いて返事をすることもあるけど、寝てる時とか面倒な時は尻尾だけチョチョっと振って返事するじゃないですか。
名前を呼んでも猫が拗ねてる時なんかは本人(本猫か)がそっぽを向いて返事を拒否してるのに、しっぽだけはどうしてもチョチョっと動くから、私はあの反応に嘘はないと思うんですが、本当にその改名前の数日間のちぃちゃんは「ユキちゃん」と呼ぶと、その反応をしてたのに、改名してからは全く反応しなくなったんですよ。
だから私はちぃちゃんが母の説明でちゃんと分かってくれたように思います。
なので、私はちぃちゃんが人語を理解してるような気がするのです。
そんなちぃちゃんがなぜ今だに我が家で宇宙人呼ばわりされているのかというと、それはちぃちゃんの最期があまりにも宇宙人的だったからです。
ちぃちゃんが我が家に来てから3年ほど経った頃でした。
ちぃちゃんは基本大人しく、散歩も先ほど書いたように1日1回数分で済むような非活動的なネコだったのですが、ある晩私達きょうだいが居間でテレビを観ていた時でした。
テレビでは「UFO特番」がやっていました。
私は小学生の頃からUFO話がすごく怖かったのですが、中学生になってからは少し平気になってきて、兄姉と夜更かしする楽しさも覚え出し、その夜はみんなで楽しくテレビを見ていたのです。
やがて、根っから明るい我が家のきょうだいノリで、兄が誰か1人に「お前は…宇宙人だーー!!」と言うと、言われた人が「ワレワレハウチュウジンダ」と言う、今となっては何が楽しいんだか分からない遊びをしだして、きょうだい4人でキャッキャと遊びだしました。
一通りきょうだいが宇宙人役を演じた後、部屋の隅のほうでくぅくぅと寝ていたちぃちゃんの側に兄が近寄り、寝ているちぃちゃんに
「お前は…宇宙人だー!」と言いました。
私達きょうだいは遊びハイになってましたから、その様子にケラケラと笑ったのですが、言われて飛び起きたちぃちゃんは一瞬ハッとした顔をしました。
そして、寝床からピョンと飛び降りると、スタスタとガラス戸の方へ歩き、ニャーニャーと鳴き始めたのです。
はじめは私達も「ホラ、ちぃちゃんビックリしちゃったよー可哀想じゃーん」と兄に言ったりしてたのですが、ちぃちゃんは鳴き止まず、段々尋常じゃない鳴き方になってきました。
その鳴き方に私達も
「ちぃちゃんすごい出たがってるよ…」「出してあげようか」
となり、雨戸を開けてあげました。
するとちぃちゃんは雨戸の隙間からスルリと戸を抜けて庭に出て、庭の真ん中あたりまで歩くと一度立ち止まりこちらを向いて座りました。
そして、戸から覗く私達きょうだいに向かって深々と頭を下げたのです。
この時の光景を私はなぜか今も鮮明に覚えてます。
それは本当に人間的なお辞儀で、深々と頭を下げていて、私は猫がこんな風に人間的なお辞儀をする姿を後にも先にも観たことがありません。
朝しか家から出たがらないちぃちゃんが夜に家を出ようとしたことは不自然でしたが、気まぐれな猫のこと、5分もすればいつも通り帰ってくると私達は思っていましたが、ちぃちゃんはその夜帰りませんでした。
そして、翌日もその翌日もちぃちゃんは帰らず、とうとうちぃちゃんはそのまま失踪してしまいました。
母や私達は、しばらくは兄をめちゃめちゃに責めましたが、あの時の「お前は宇宙人だー!」くらいの声の大きさで猫をかまうことはそれ以前にもあったことだったので、大声が怖くなってちぃちゃんが怯えて出て行ったと考えるのは不自然だと私達も思っていました。
だから後からみんなでちぃちゃんが出て行った理由を考えている時に誰かが言った
「ちぃちゃん、本当に宇宙人だったのかも」
という台詞にみんなが同意しました。
おりしもその頃「宇宙人は人間に姿を変えて実はすでにこの世に潜伏していて、人間の生活を観察している。」という説を雑誌ムーかなんかで読んだこともあり、私は「人間に姿を変えられるなら猫にも姿を変えられるんだろう」と思い、ちぃちゃんもそういう潜伏員だったんだと思うようになりました。
ちぃちゃんは宇宙人で、正体がバレかけたから宇宙に帰ったのだということです。
荒唐無稽な話ですが、我が家ではこれは普通の話として今もたまに話します。
最後に、私が今回皆様にお伝えしたいことはただ一つ。
皆様、おたくの猫ちゃんが多少不自然な言動をとる猫ちゃんだとしても、どうか気づかないフリをしてください。
猫ちゃんがたとえ宇宙人だとしても、可愛い姿でそばにいてくれりゃいいじゃないですか。
けして、宇宙人だという事実を猫ちゃんに、突きつけてはなりませぬ。
皆様のうちの可愛い猫ちゃんが、ちぃちゃんのように出て行ってしまわないようにくれぐれも注意してください。
最後にちぃちゃんギャラリーを。
ベランダが好きだったちぃちゃん。今思えば宇宙船との通信に都合がよかったのかもしれません。
仏壇の上で寝る不謹慎なちぃちゃん。
隣の家のベランダから降りられなくなって助けを求めるちぃちゃん。どうやって登ったのかは謎。
おまけ
うちの猫の特性かと思いきや、エサ場の水を飲まない猫ちゃんが世の中には沢山いるらしく、爆RTされてたツイート。
飼ってた猫がどの子もエサ置き場の水入れの水は一切飲まず、わざわざ風呂場に飲みに来てたのが長年の謎だったんだけど、昨日この番組観て理由がやっとわかったよ。 pic.twitter.com/WLzw5rf81t
— 桜島ニニコ (@sakurajimanini) 2018年2月20日
今週のお題「ねこ」