限りなく透明に近いふつう

やさしい鬼です お菓子もあります お茶も沸かしてございます

女と睡眠

 

 

なんか、レノアのCMについてなにげなく呟いたらものすごく共感されたので

「女と睡眠」について、もうちょっと思うところを書こうかな、と思います。

 

私の人生の中で、睡眠時間が一番短かったのは20~27歳だったと思います。

20歳になってすぐ家を出て、前半はフリーターでバイト3つかけもちして絵も描いてっていう時代。

後半は歯科医院でいちおう正社員だったから、それまでと比較した手取り額の多さに満足してたけど、今考えると福利厚生が一切ない上に拘束時間の長さを考えると全く割にあってない。

ずっと帰宅時間が22時頃、朝は8時には家を出る生活でした。

その頃の一日の睡眠時間は平均5,6時間。

 

今思えば慢性睡眠不足だったようで、腹5分目以上になる量の食事を摂ると、どんな状況でも猛烈な睡魔に襲われてしまうので、外ではご飯を食べないようにしていましたね。

本当に抗えない眠気に襲われるので、一時はそういう病気なのかと心配すらしたんですが、結婚して数か月専業主婦をしてたら、食べても眠気に襲われない事に気付いて、なんのことない、ただの睡眠不足だったんだなぁ、と思いました。

 

今はシフト制勤務なので夜勤での徹夜は頻繁にあるけど、かなり自由時間も多く、かつ自分の世話しかしなくていいので、非常によく寝てます。

たぶん平均一日7,8時間は寝てる。

食べても猛烈に眠くなることはないし、大抵は起きた時に「もっと寝たいなー」とも思わないので、十分な睡眠が取れていると思う。

そういえば、昔、どっかの寝具メーカーの広告で「目覚めた時に『気持ちいい、もっと寝ていたい』と思うのは二流、一流の寝具は『もう十分寝た』と思わせてくれる」みたいな文言があって「なるほどねー」と思った記憶がある。

 

それはさておき、私の周りの女の人は本当に寝ていない。

特に保育園児の親はすごい。

 

先日、職場の同僚が二人目出産のため産休に入ったんですが。

数か月前に彼女と仕事中に誕生日プレゼントの話になり「なんか買ってもらうの?」

と聞くと「いやー、いま欲しいもんないし、結局は家計費だしな。」とのこと。

まぁ、結婚してるとそうなるやねーと相槌を打つ私の横で彼女は「あ、ダンナにお願い聞いてもらお!」となにか思い付いた様子。

私が「お、なんかあるの?」と聞くと彼女は言う。

 

「誕生日はアラームかけないで寝かせてもらう!」

 

私はてっきり続きがあるもんだと思ったので「そんで?」と聞くと、彼女は「ん?寝んの」と答えた。

お互い「ん?」「ん?」となった後、私が「……まじか?」と聞くと彼女は言いました。

 

「だって、寝るに勝る娯楽がない。」

 

 

寝るに勝る娯楽が無い……!!!

思わぬ所でゲットしたパワーワードを心で噛みしめてたら、

あっ、これ、大島弓子大先生の漫画で言ってたやつだ!と思い出しました。

 

 

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大島弓子著・白泉社文庫「ダリアの帯」に収録「乱切りにんじん」より

 

「こういそがしく目いっぱい働いてるともう楽しみは音楽でも~(略)なくなるの、

ひたすら眠りたい 睡眠が唯一の楽しみになるのよ」

 

こう語るのはこの話の主人公、坂東小萩ちゃん、16歳。物語の冒頭で母親が急死。

それまでは父母と3人暮らしで普通の高校生活を送っていたのに、家事が全く出来ない父親の面倒を見る生活が始まり、勉強をしていても献立に頭を悩ませたり、家事と学業の両立に苦戦している場面です。

ストーリーは今回関係ないので紹介を割愛しますが、ごめん、私が好きなシーンだけちょっと書かせて……。

 

母の葬儀とその疲れから風邪をひいて、一週間休んでいた学校に久々に登校したこのシーンで

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小萩ちゃんは「父親が宇宙人だった」と、クラスメイトに話します。

ここは序盤のシーンなので、この段階で読み手のこちらとしては、この物語がどういう方向に転ぶのか分かりません。

大島先生の作品はアイデアの飛び方も多岐に渡るので「SF的な展開があるのか?」とすら思わせるてくるのですが、続くコマでこれが大島先生の目いっぱいの皮肉であることが分かります。

 

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ね??

 

「とにかく風邪の床から起きてみたらすごいの 家の中のことなにもやってないの

ちらかしっぱなし洗濯物ためっぱなし 食器なんて客用のまで手をつけて 汚れたのは山積み」

と、小萩ちゃんは一週間で「父親は家事が一切できない」ということを知ったんですよ。

そして大島先生はそれを読者に伝えるうえで、ただの「家事ができない父親」とするのではなく「家事ができない=人間がやることが何もできない=これじゃ宇宙人じゃないか」という表現をしているんです。

一見、大げさなように感じるかもしれませんが、食器なんて洗ってまた使うのが当たり前の物を「洗わずに新しいものを際限なく使ってゆく」という姿や、その不自然な行動を躊躇なく行う思考回路は、もし直で見たらまるで人間界の常識をインプットされていないロボットか宇宙人のように感じるかもしれない、と私は思います。

だから思うんです。

もー先生ったらじょうずー♡

あと、ここは暗に「家事は女の仕事」という無言の圧が浸透している世の中に対して、「家事は人間の仕事でしょう」と言っているようなメッセージ性も感じますよね。

皮肉が聞いてて笑えて共感できるところで、私ここ好きです。

 

で、話を戻して考えてみると。

彼女は漫画の中の女の子で「母親が急死した上に、父親が古風な日本男児で絶対に家事をしないので、学生なのに家事をやるハメに」という、いわばアクシデント的な状況で、若いのに睡眠が娯楽の頂点に鎮座しているわけですが、同僚は、現実に、なんのアクシデントも起きていないのに、恒常的に、睡眠が娯楽の頂点という生活を送ってるんですよね。

……。

なーんかなー、夫婦のことは他人が口出しするもんじゃないからその場は「じゃ、希望休取んないとね!」「うん!」で話を終わらせたけど……。

いつも、彼女の家の話とか聞いてると、やっぱりどう考えても夫婦で家事育児の分担バランスが偏ってると思うから、もうちょっとなんとかならんのかい!と思ってしまうところです。

 

特に、私は関東出身で、大人になってから九州に来たから、東京と福岡に同世代女友達が点在しているので、地域性による夫婦の家事分担比率の違いも如実に感じてしまう。

東京に2夫婦、私が遊びに行ってのんびり過ごさせてもらう家庭があるけど、どっちの家も夫さんがめちゃくちゃ動くし、子守も家事もかなりやる。

手伝うとかいうレベルでなく、家庭を共同運営してる感じ。

 

でも福岡に来て5年経ち、色んな女の人と家や夫婦の話をしたけど、いまだに「うちの夫は家事するよ」と話す女の人に会ったことないし、家の話の端々から「ここんちの夫、まじでなんもしないんだな」と思うような背景しか浮かんでこない。

もちろん、福岡だろうと九州だろうと、私が出会ってないだけで、ちゃんと共同運営者レベルで家事育児に携わっている男の人はいると思います。(関東にも動かない男の人はごまんといますしね……。)

でも、福岡の身近に慢性睡眠不足な母親しか見当たらないので、つい比較してDisってしまう私をお許しください。

 

主観だけど、福岡の女の人は優秀というか、無理を無理と思ってなくて、なんでも自分で出来ちゃう人が多いような印象があります。

ハナから男の人と家事を分担する意識がなくて、家のこと子供のことも「自分でやったほうが早い」って判断されてることが多い気がする。

「ダンナにやらせると二度手間」とか「頼むほうが疲れる、面倒」とか、こっちの女の人がよく言う台詞ですね。

たぶん、そういう家の夫さんに家事をしてもらうと、出来がどんなでもダメ出ししたらむくれるから「してくれたこと自体に感謝」な行為なのかもしれない。

夫婦どちらも家庭を運営する戦力を持つ場合は共同運営者って感じだけど、↑この感じだと、家庭を主力で運営している妻からしたら、もはや夫は手伝いですらなく……ボランティアさん?「本来しないでいいことをしてくれたからありがたく思わなくちゃ」的な?

 

わー疲れるだろうなー。

そんで、あー今日も4時間しか寝られない……と思いながらも、ちょっとは自分の時間が欲しくて深夜にテレビ付けたらCMが「女の人って寝られないでしょ~?レノアのいい香りでよく寝てくださいね~」ってか。

 

アホかー!!

誰が洗濯係じゃボケー!!

論点が違うんじゃー!!!

 

 

 

 

あれ……?最後は波田陽区で文句言おうと思ってたのに、おいでやす小田になってしまいました。

時の流れは残酷ですね……。

 

そんなわけで、皆様が睡眠以外の娯楽を楽しめる程度に寝られたらいいなと思います。

 

では、おやすみなさーい。