限りなく透明に近いふつう

やさしい鬼です お菓子もあります お茶も沸かしてございます

安心と慢心

 

 

 

私は家の近くに、彼氏が来る時用の駐車場を借りている。

私の名義で借りて、彼氏が私に駐車場代を支払うシステムを採用、もうじき2年になる。

お金にきっちりした者同士なので、ここまでで特にトラブルなし。

 

ただ、先日私は引っ越しをしたので、彼氏用の駐車場も新たに借り直した。

すると、駐車場賃料の支払いがこれまで毎月だったのが今度から2ヶ月に1度システムになった。

 

先日、そうなってから最初の賃料支払いの時期が来た。

いつも遊びに来た帰り際になんとなく「あ、これ今月分」と渡されるのだけど、その日の帰り際に彼氏が言った。

「今度から偶数月の月末だっけ?」

主語は無いが駐車場代のことだと分かったので、私も「そうそう」と答えた。

すると彼氏がふつうの顔で言う。

「まぁ、今年中に終わらないよね?」

またも主語がなく、今度は推測が付かなかったので私は「なにが?」と聞いた。

すると彼氏が同じ顔で言う。

「この関係」

0.5秒沈黙した後、私は吹いた。

言い方の普通さと内容のヘビーさがアンバランスなのが面白くて「だはははは!」と笑った。

ほぼ同時に彼氏も「あはははは!」と笑っていた。

2人で「2人とも笑ってる」という事がまた面白くなって、ひとしきり笑った。

その後「たぶん大丈夫だよ、あなたが急に変な宗教に入るとか言い出したり、よっぽどの事が発覚しなければ終わりはしないよ。」と私が言うと、彼氏は「へへへ、今の面白かったね」と言いながら12月分までの駐車場代を置いてった。

 

 

彼氏が帰った後、私はしみじみと「やっぱあの人好きだなー」と思った。

恋愛のセオリーとして、交際年月が経過して関係が安定すると、「この関係が破綻するわけない」という気持ちがお互いに大きくなってくる。

それは「安心」と名付ければ良い傾向だし、「慢心」と名付ければ悪い傾向と言える、いまいち評価の定まらない現象だと思う。

 

私は、前に結婚した時は臆病で、結婚してもしばらく慢心はしなかった。

そもそも、破綻した恋愛しか経験してないからそれまで未婚だったわけで、結婚するまでは「終わらない関係」を未経験なのだから、信じられるわけがない。

両親が不仲だから見本も見た事ないんだし。

 

だから、以前このブログにも書いたけど、結婚直後に2人の財産を一本化する事に抵抗があって、元夫があまりにも「夫婦になったら人生ニコイチ」にすんなりと移行したがっているのがむしろ不思議だった。

この人は怖くないのか…?と。

「もし別れる事になったら、それって大変じゃね?」というのが、渋る理由を言語化したものなのだが、当時の私は言えなかった。

元夫がまっすぐな善人だったから、結婚当初に私が別れる想定を1ミリでもしている事がバレたら彼は傷つき、嘆き悲しみ、結果、私を叱ると思った。

結局のところ、私が言語化する前に元夫は察して「何を心配してるのか、まぁ言わんとしてる気持ちは分かるけど。もし万が一の時には俺はきちんと逃げも隠れもせずに正当に財産を分ける人間だよ。結婚したんだから、そのくらいの信用はあるはずでしょ?逆に言ったらその程度の信用ならない相手なのに結婚したの?それはおかしくない?」と言ってきた。

私はその時、「たしかに」と思って納得した気がして財産を一本化したけど、100%の納得ではなかった。

でも何が引っかかるのか考えても頭が回らなかったし言語化も当然出来なかった。

今思うと「元夫の人間性」を信じていないのではなく「関係性の持続」を信じていないだけなので、「俺を信じてないのに結婚したの?矛盾してない?」という元夫の質問には

「トンズラするような人だとは思ってない、人間性は信用してる。けど、関係性は誰にも保証出来ないから、面倒な事が起きる可能性は減らしたいだけ。そういうのはせめて子どもが産まれてからでいい気がする。」と言うのがベストアンサーだったと思う。

まったく、どうして人生のベストアンサーは数年越しでしか出ないのか……

早くリアタイでベストアンサーが出せるお利口さんになりたい…。

 

で、話を戻すと。

私は「ラブラブな時に別れる事なんて考えちゃダーメ!」という甘々ルールが通用するのは10代までじゃないかと思う。

元夫と結婚3年目で一度離婚しかけて復縁してからの結婚生活10年間、私たちは別れる想定を一切しない関係だった。

今思うとそれは夫婦関係を悪い方向に進ませた大きな要因だったと思う。

不満や問題を感じた時に、別れる想定を1ミリたりとも排除した思考回路だと

「どうせ別れないのだから、考えるべきは『仲良く過ごす手段』だ」

となる。

この「どうせ別れないのだから」は、間違いなく慢心だ。

慢心ゆえ、問題を「自分が我慢してたら仲良くいられるんだし、まぁいっか」の箱に投げ入れて放置してしまう。

箱の蓋がキツくなり、そんなパンドラを40代まで持ち越すのがどうしても嫌だったから私は離婚に至った。

でも元夫への愛情はずっとあったので、「愛情の有無」と「関係性の継続可否」は、完全に無関係でもないけど、愛情だけでは関係性の持続は難しいのだなと思った。

 

そんなようなことを、私は結婚生活で学べた。

だから、新たに恋人が出来た時に「更新制にしよう」と言った。

逃げ恥みたいな正式なやつじゃなくて、気持ち的なやつ。

毎年誕生日でも交際記念日でもいいから「まだ一緒に居たい」という気持ちの有無を互いに自覚し、示し、確認した方がいい。

そういえば10代の頃から、付き合って年月の経った男性に「好き?」と聞くと「付き合ってるんだからそんなこと聞かなくても分かるでしょ」という濁した答えをされてきた。

なぜ男は一年以上付き合うと「好き」を渋るのか?

「当たり前のこと聞くなよ」

「じゃなきゃ、ここにいないよ」

「いい年してそういうのやめてよ」etc…

 

いや、「好き」って2文字言うよりコスパ悪いんですけど。

ずっと思ってた、ただ「好き」って言えや、と。

なぜすんなり「好き」と言えないのか聞くと「恥ずかしい」と言う男性が多かったけど、好きな女が望んでる言葉も与えず、セックスとか家事労働は女から与えられて当然と思ってる幼児性のほうが恥ずかしくないんですか?だ。

 

今の彼氏は、とりあえず2年近く経っても、私が「好き?」と聞くとオウムのように「好きー」と答える。

話が早い。それでいい。私も好きだ。

 

だから、いつも細川ふみえの如く「スキスキスースキスースキスー」言ってるのに、唐突に「終わらないよね?」と聞いてきたのが面白かった。

 

それで、帰った後にしみじみ思った。

この人、頭の中「好き」だけのお花畑脳じゃなかったんだ。

ちゃんと別れる可能性も想定してるから、慢心しないで「好き」を示し、この関係を継続する意思を私に見せ続けてくれる大人なんだ。

と思って改めて好きだなーと思った。

あと、自分がもっと幼かったりメンタルが不安定だったら、彼氏の発言に対し「別れる可能性があるって少しでも思うわけ!?」というショックを受けて笑えてないと思う。

実際に大昔付き合ってた人に「先のことは分からないんだし」と言われただけで、悲しくて泣いたこともあった。

だから、自分が彼の発言を無意識に笑い飛ばせていたところも、ああ、大人になったなと思えて気分がよかった。

 

最近はそういうことにいちいち「幸せだなぁ」と思いながら過ごしている。

 

 

追記

先日、私の地味ハロウィンがバズってしまい、沢山の方々がリプライを下さったのですが当方基本的にはお返事はほとんどしないことにしているので、お返事しなくてすみません。

たくさん褒めて下さって、ありがとうございました。